第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集
緊張か寒さか、強張る手を擦り合わせてから、悠仁は自身の脚をパンッと叩いた。
「じゃあ、とりあえず女神像を回収すっか」
「ああ」
2人が中庭の時計塔の方へと視線を向けた時、それを待っていたかのように不自然に風が吹いた。
風に運ばれるように雪が渦を巻く異様な光景と冷気に、こちらも反射的に臨戦態勢に入る。
闇夜は呪霊の独壇場。そして、人間に害をなす怪異の領域。息を潜めて、渦の中心を見つめた。
ゆっくりと姿を現したのは、木だった。
否、木の形をした何かが、完全に地面から這い出る。
枝が触手のように動き、周りを探る。細長く蠢くソレの先端にある目玉が、ギョロリと彼らの方を向いた。その視線に、頭皮から背にかけて鳥肌が立つ。
「コイツが『黄泉がえりの木』か」
悠仁が視線をずらすと、枝に巻かれるように呪霊の胴体に括り付けれた人々がいた。
パッと見て3人。行方不明者たちだと悟り、瞬時に頭に血が上る。
「これが都市伝説の正体か。随分と奇抜なクリスマスツリーだな」
思わず恵が吐き捨てるように呟く。
全身にビリビリと伝わる呪力、血走った目玉がぎょろぎょろと動いている様は、極めて醜悪。
同時に、恵と繋がってる式神の玉犬が異常を知らせてくる。
「……虎杖、紅井さんのところへ行け」
その言葉で、悠仁は察する。
だが、彼らは気付いていた。呪霊とは異なる呪力の気配が増えた。
この場にもう一人、呪術を扱う人物が居る。呪詛師だった場合、恵を単独で戦わせていいものか。
悠仁が躊躇った、その時だった。
「すべて、俺が片付ける」
落ち着き払った声で恵が宣言する。同時に、お互い前後に散る。