第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集
「女神様の声?それ詳しく聞いてもいい?」
食い気味に悠仁が聞き返すと、数秒の沈黙が流れた。
「……呼ばれるの」
「呼ばれる?」
返ってきた要領を得ない答えに悠仁が首を傾げると、華乃は困ったように眉を下げた。
「夜中に、声が聞こえるの。優しそうな女神様の声。死者の国から代理で此処に来た……って」
更に都市伝説らしいオカルト要素が飛び出してきた。
突拍子もない話だ。女神とやらの正体と目的に見当がつかない。そして、何故死者の代理を騙(かた)って接触してくるのか、そこも謎だ。
情報量が多くて疑問が尽きないが、次の華乃の言葉を聞いた悠仁は、今はそんなことを考えている余裕はないことを思い知る。
「あなたには教えてあげる。私も女神様のおかげで、お姉ちゃんと会えそうなの」
恍惚とした表情で呟く彼女を見て、悠仁の背に悪寒が走る。少しだけ冷静に考えれば、一般人でも詐欺か何かを疑うはずだ。
亡くなった姉と対面することに何も疑問を持っていないのは、精神的に限界がきていて藁にも縋る思いだからか。
「その……女神様は他に何か言ってた?」
「『心から願えば会えるだろう』『時期が来れば黄泉が汝を導く』って」
嬉しそうに笑む華乃の表情からは、嘘や演技をしているようには見えないが、それが真実かどうか確かめる術もない。
相手が呪詛師である可能性も視野に入れて話せと恵から警告されたが、悠仁にとって腹の探り合いのような会話が大の苦手だ。
とりあえず余計なことは言わずに、彼女の話に頷いて会話の続きを促す。
「私ね……女神様のことを信じてる。あの世の予定では本当はお姉ちゃんは死ぬ予定じゃなかったから、特別に私とお話させてくれるんだって」
華乃の口調には熱があり、まるで何かに心酔しているかのように見える。
「あの時……ビルの倒壊に巻き込まれた時、お姉ちゃんは私を庇ってくれた。でも、瓦礫の下敷きになったお姉ちゃんの手が冷たくなっていくのに、私……何も出来なくて……」
徐々に声が掠れていき、その瞳には涙が浮かんでいる。