第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集
溢れる涙を拭いながら、華乃は搾り出すように言った。
「だから私、星の女神様にお願いしたの。クリスマスはお姉ちゃんと過ごしたいって」
彼女は深呼吸し、感情の乱れを整えるように息を吐いた。
その瞳は真剣そのもので、先程までの儚い様子とは違う。強い意志を以て真っ直ぐにこちらを見据えていた。
「馬鹿だって、思ってるでしょ?」
彼女は自嘲気味に笑い、目を閉じた。
「でも……お姉ちゃんにもう一度会いたいの。会って謝りたい。あの時、私は何も出来なかったから……」
その言葉には、どこか自責の念が宿っている。
「そっか」
悠仁は一言返すのが精一杯だった。
彼女は姉を想うが故に、“星の女神様”に縋ったのだろう。その想いは痛いほど分かるし、共感できる部分もある。けれど、彼女のやり方が正しいとも言い難い。
「紅井さん」
「華乃でいいよ。歳近いでしょ?」
明るい声音に釣られるようにして悠仁が視線を上げると、彼女は悲しげな笑みを浮かべたまま、こちらを見つめていた。
「……分かった。俺も『悠仁』で」
「うん」
「俺、友達待たせてるから行くよ。また華乃のところに話を聞きに来ていい?」
「もちろん。いつも退屈だから大歓迎」
お互い微笑み、握手を交わす。伝わる体温が、薄幸の少女の行く末を案じる彼の胸をじわりと熱くさせる。
挨拶をして、悠仁は病室を後にした。
廊下に出れば、既に恵が待機しており、こちらをじっと見つめている。
どうやら両者とも情報収集は上手くいったようだ。恵の視線に頷き返し、悠仁もその場を後にした。
「伏黒はどうだった?」
自販機がある休憩場でベンチに腰を下ろす。
情報収集の成果を話し合いながら、彼らは缶コーヒーを手に一息ついていた。
「戸奈 海は白だ。夜中にウロウロしてたのは、こっそりジュースを買いに行っただけだって白状した。それどころか、暴力を振るう親がビル事故で死んで、せいせいしたらしいぞ」
恵はコーヒーを一口飲み、小さく溜め息をつく。