恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
時間は更に過ぎた。
七瀬が京都での任務を終え、二十日経った頃の事である。
「君の階級って庚(かのえ)なんだっけ。どうして二人だけの任務だったんだろうね。まあ鬼は倒したから今更理由なんて、どうでも良いんだけど」
「そうですね…」
夏のうだるような暑さは徐々に薄れ、夜間は秋の訪れを思わせる鈴虫の鳴き声も聞こえるようになって来た。
七瀬に対し、疑問を投げかけたのは柱最年少の霞柱・時透無一郎。
刀を手にしてたった二ヶ月で柱へ昇格した、鬼殺隊きっての天才と謳われている少年の剣士だ。
無一郎は若干十四歳。
腰まで伸びたサラサラとした長い髪に、小柄な体躯。声変わりはしているものの、少女と見間違う程の顔立ちの為、何も知らない人間にはほぼ確実に女子と思われがちである。
七瀬も話には聞いていたが、初対面時は女ではないのかと見間違えた。
しかしそれは一言二言、言葉を交わすとやはり間違いであったと思わざるを得なかった。彼は変声期を迎え、しっかりと声変わりをしていたからだ。
任務も無一郎一人で良かったのでは?と疑問に感じでしまう程、彼はあっさりと鬼を滅殺した。
悪鬼の頸を斬った後、刀に付着した血を一度振り払い、納刀する霞柱の所作には随分と余裕が感じられた物だ。
鬼を倒した田舎道から歩く事、三十分。
会話らしい会話もなく、七瀬と無一郎は静かに夜の道を進んでいた。
まだ営業をしている食事処がある大きな通り、それから十字路を通り過ぎるばかりで、二人の進む道が分かれない事に段々と疑問に思う七瀬。
『霞柱の自宅と私が住んでる長屋って、同じ方向…?』
彼がすたすたと歩く後ろを首を傾げながら進む彼女だったが、とある場所まで来た所で、ようやく無一郎の両足がピタリと停止する。
「……着いちゃった」
『凄い! 大きな屋敷……!』
立派な木造作の門扉が、二人の前に姿を現した。