恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
七瀬が京都任務から帰宅した数日後、とある噂が鬼殺隊内でもちきりであった。
「聞いた? 沢渡さんと同じ任務についた人達の事」
「あれでしょ? 三人共彼女と別れた途端、妙な血鬼術にかかっちゃって…」
「そうそう、男性隊士に片っ端から【自分と一夜を共にして欲しい。じゃないと死んでしまう】って誘いまくって……任務に支障が出てどうしようもないから、蝶屋敷で療養してるんでしょ? 術が抜けるまで」
どう言うわけか、血鬼術にかかった隊士は柱に声をかける事はないらしい。
「そう言う術って、柱の方にこそ威力を発揮…って言うのもおかしいけどさ。そんな感じするんだけどね」
『あーそれ私がかかってる術です……』
ここは鬼殺隊士の殆どが利用する甘味処の以心伝心。
七瀬は任務明けのくたびれた体でこの店自慢のわらび餅を食べていた。
そこへ先輩にあたる女性隊士が三人来店する。
七瀬は店内の隅の席に座っていた為、出入り口から見えにくかったようだ。
三人共特に彼女を気にする事なく、そのまま世間話を気軽に続けていく。
「怖いよね〜! 血鬼術。色々あるけど、男女に関係する物が一番厄介かも」
「いや、血鬼術はどれも厄介でしょ。異能ってだけで脅威だもん。遭遇したくなーい!」
「確かにねー! ねえねえ、今日は何食べる??」
【姦しい(かしましい)】と言う言葉がある。
【女】三つで構成されているこの字のように、女が三人集まればうるさく、騒々しいなどと言った意味合いで使用されるのだが、今の七瀬にはこれがよくあてはまる。
『やっぱり厄介だよね……この術。異性の柱全員とのまぐわいしなきゃ叶わない、なんて』
先輩隊士は既に血鬼術の話をしていた事などとうに追いやり、既に別の話を進めている。
彼女達が来た事により、食欲が急に減退した七瀬だが、何とか甘味を体にかきこみ、逃げるように会計を済ませて外へ出た。
癒しを求めてこの店にやって来たが、疲れを更に背負って帰宅したのである。