恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
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思いの外、七瀬が鬼殺隊士になるまでの話が長くなってしまったので、そろそろ彼女が鬼と対峙している所へ戻すとしよう。
場所は京都府の北部に位置する、周龍神社である。
どんな気まぐれなのか、目の前にいる鬼に「願いを叶えてやる」と言われた七瀬は、何故私が?と疑問符がぎっしりと脳内を埋め尽くしている。
「嬢ちゃん、嬢ちゃん! 刀はまだ出さんでくれ。わしを斬るのはその後でもよかろう?」
「そう言われてはい、そうですかって素直に応じると思う? 鬼は嘘ばっかりついて私達鬼殺隊を翻弄して来たの。私が使用する呼吸の型に斬られても痛くない物があるから、安心して」
三人での合同任務が無事終了し、皆がそれぞれ帰路を急ぐ途中に七瀬は一風変わったこの鬼と遭遇してしまった。
龍が住む神社と言われているのも関係があるのか、鬼は龍その物の姿である。全長はおよそ二メートル三十センチと言った所か。
「全くどこまでも反抗的なおなごじゃわい。何でも叶う力を授けると言うとるのに」
「…えっ、…何でも?」
【何でも】と言う単語に反応した七瀬に、龍の姿をした鬼は左右に生えている長髭をゆらりゆらりと動かした後、二回頷いた。
「そうじゃ、何でも叶うぞい。強くなりたいでも美しくなりたいでも、金持ちになりたい。またはわしらのように人間より遥かに長く生きる……等なーんでもな!」
「……」
七瀬は刀を構えたまま、しばし逡巡した。
何としてもこれは叶えたいと言う願いが、ずっと胸の中をぎゅうぎゅう詰めにしているからだ。
強くなれば給金は増える。美しさと言う点に関しては、隊士になる前から然程興味はない。
しかし鬼殺隊士になった時、育手の安藤から出来るだけ長生きしてねと言われ、ずっとその言葉は心に残っていた。
同期は四人中、既に二人が隊士ではなくなっている。一人は鬼にやられ、一人は型を打てない体になり、隠へと転向している。
「どんな…願いも、叶うの?」