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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿



春奈が七瀬の部屋で手紙を目にした数十分後、当の本人は街中を悠々自適に歩いていた。

実は母以外の家族には、事前に挨拶を済ませていた彼女。

父は七瀬が家を出ていく事を一度は引き留めたが、きょうだい達は「そうなんだ、いってらっしゃい」とあっさりとした対応であった。

『男きょうだいってホントあっさりしてる。あの家で私がやる事をいつも肯定してくれたの、父さんだけだったな』

荷物は風呂敷一つ。

最低限の物だけ持ち出した彼女はいつもの道着姿ではなく、袴姿だ。
「足しにしなさい」と父親がくれた餞別を財布に忍ばせ、一体これからどこへ何をしに行こうとしているのか。

『あのおじさん、高尾山の麓に住んでるんだっけ。山奥に剣術を習いに来る人なんかいるのかな』

七瀬が街中で喧嘩の仲裁をした時に出会った男は、剣術道場の師範をしているらしい。

「その力、喧嘩じゃない事に使いな。もったいないよ」

家族でたった一人、自分をありのまま認めてくれた父に似た物を感じた彼女はずっとその男の事が気になっていたのだ。

師範らしく道着姿、手に持った袋に入っていたのは竹刀だろう。

男は七瀬の掌に押し付けるように何かを握らせると「またな」と再会を約束するかのような言葉も同時に彼女に投げかけた。

掌におさまる小さな紙に意外にも丁寧な字体で記載してあったのは、彼の自宅の住所。

『電車は浅川駅(現在の高尾駅)までかあ。高尾山の近く…なのかな。とりあえずそこまで行って駅の人に聞いてみるか』

自宅から新宿までやって来た七瀬は、駅舎に貼ってある路線図を見ながら乗り換え地点の八王子駅を目指す事にした。



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