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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿



「私は結婚しないし、したくもない。母さん見ててほんっとそう思う」

「何ですって? 七瀬、口が過ぎるわよ!! ちょっと人の話は最後まで……!」

言いたい事だけ言った —— そんなスッキリした面持ちの娘は母親を一度睨むとクルッときびすを返し、屋内に入って行く。

春奈は七瀬と逆で、言おうとした言葉を途中で切られた為に胸の中はもやもやが終わりのない渦で充満しており、気分が大層悪くなった。

『私を見てると結婚したくない……? どう言う事?』

優しいがどこかのほほんとした佇まいの夫、手はかからなかったが少し自惚れている部分もある長男、明るいがのらりくらりと面倒事をかわす次男。

剣術も学問も難なくこなす要領が良い三男。その一つ上に七瀬。
四人の子供に全力で向き合って来た。周囲からも子供達を褒めて貰う事が多く、それは春奈の自負となっていたのだ。







『あれからよね、あの子が剣術を争い事に使用するようになったのは』

過去の出来事を脳内で思い出しつつ、廊下を歩いている春奈は七瀬の自室へと再度向かう。

さっきは慌てていたから、もう一度くまなく見てみよう。
すっきりと片付いている七瀬の部屋は、女子を思わせる物がほとんどない。

着物は殆ど着用せず、いつも道着か袴姿の為だ。
唯一肩より長い髪は一つに結んでいるが、年頃の娘が興味を示すような化粧は一切せず、女っ気はとんと皆無なのだ。

『何かしら、これ』

文机の中央に置かれている一枚の白い紙。
右横に筆を使用した痕跡があった為、ここで何かを書いた様子だ。
春奈は首を傾げながら、用紙を裏にひっくり返した。

すると ——

「 母さんへ

この家を出ていきます。私は母さんの期待に応えれそうにないから。こんな娘の事は一日も早く忘れて下さい。父さん、兄貴達、博己と仲良く暮らしてね。

七瀬」

「出て、いく……?」

文を持った春奈の両手が小刻みに震えている。
部屋の硝子窓の外からはジジジジ…とアブラゼミが彼女の耳にまとわりつくように鳴いていた。



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