第66章 クリスマス🎄お題夢 / コミュニティ内で募集
「はぁ、いいなぁ……」
事の発端は津美紀のため息だった。
この日、伽那夛は伏黒家に来ており、幼い津美紀や恵のために作り置きできる料理をせっせと作る最中、津美紀のため息を聞きつけた。
「ため息なんか吐いてどうしたのよ?」
キッチンに立つ伽那夛が尋ねると津美紀は慌てて両手を振る。
「な、何でもないよ!」
「本当に?」
「うんっ、ホントだよ。ホントに大したことじゃないから……」
津美紀は目を泳がせ、スカートを掴む手をモジモジさせて明らかに誤魔化していると分かった。
「……津美紀、嘘はダメよ?何でもなくないじゃない。大したことじゃなくても何かあったんでしょう?」
「!」
伽那夛は食材を切っていた包丁を置き、津美紀の傍らに行くと、しゃがんで目線を合わせる。
「津美紀は我慢強くて聞き分けが良くてとてもいい子だと思うけど、たまには子供らしくわがまま言っていいのよ?……まぁ、私がそれを叶えられるかは別問題だけど」
恵の父親である甚爾はなかなか家に帰ってこないし、再婚したという津美紀の母親も伽那夛は見かけたことがない。
普段家に恵と2人きりでいることが多いため、料理も洗濯も掃除もこなす彼女は小学生とは思えないくらいしっかり者だ。
だがそれと同時に子供らしく大人に甘えたり、同年代の友達と遊ぶことを我慢していると思うと、不憫になってくる。
伽那夛自身も我慢ばかりの幼少期を経験しており、余計に心配なのだ。
よしよしと津美紀の頭を撫でると、それに促された津美紀がぽつりぽつりと話し始めた。
「今日学校でね、クリスマスの話になったの……」
「クリスマス?」
「うん、クリスマスの前の夜はクリスマス・イブっていって、パーティーをしてケーキを食べたりするんだって……それで、うちではどんなパーティーをするの?って友達から聞かれて……」