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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍



「蛇柱、私…あなたの事が好きです」
「……?」

あれ、聞こえなかったのかな? 七瀬は今の今まで早く言え、とせかしていた小芭内が急に黙った為、やや混乱していた。二人の距離は五メートル少々。

小さな声で言ってはいない。
緊張はしていたが、それでもはっきりと言葉を紡いだ自覚はある。

「あの……ですから私はあなたの事を……お慕い、して、いま…す」
「……」

今度は言葉が途切れ途切れになってしまい、これでは伝わらない。

そう判断した彼女は聞かなかった事にしてほしいと小芭内に伝えようとした所 ——

「沢渡、貴様の言いたい事は…理解、した」
「あっ! いえ、お気になさ、らず…」

気にしないでと言うのは何だかおかしいかもしれない。
七瀬は思い人に気持ちをようやく伝えた安心感と脱力感で、思考が上手く回っていないようだ。

二人の間にシン、とした空気が流れている。ピチチと雀達が可愛く鳴く様や、周辺の家屋から聞こえる生活音が互いを包む中、口を開いたのは蛇柱。

「沢渡の気持ちは……ありがたいが、君の気持ちには ——」

「あ、あの。それ以上は口にされなくても大丈夫です!! 玉砕覚悟で……ただただ自分が勝手に起こした行動ですから。出来れば、忘れて、下さい」

両手を胸の前に振り、真っ赤な顔で小芭内に嘆願する七瀬。彼女はいたたまれなくなり、くるりと体を向けようとするが、これだけは伝えておかねばと思い直して再び彼に向き合った。

「私の大好きな師範に…あなたの気持ちが届くように…心から願っています」
「……」

師範もあなたの事を思っていますよ。喉元まで出かかった言葉だが、これは自分のお節介になってしまうと判断し、七瀬はぐっと堪える。

失礼します、と頭を下げた彼女は、小芭内に背を向けて静かに歩き出した。下を向いていると涙が溢れそうだった。

真上にある空に視線を向け、澄み切った青空をただひたすら見上げ、七瀬は恋柱邸に帰宅した。

一部始終を黙って見ていた鏑丸。
白蛇は小芭内の首周りをシュルルと一周した後、足が止まったままの彼を伺うように、じいっと視線を送る。
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