恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍
スウ、ハアと短い呼吸を一度繰り返すと、空中で体を横向きにひねりながら弐ノ型の改を放ち、落下していく自分の軌道を変化させた。
「横水車!」
回転している水車が丁度横に倒れた動きだ。
これにより、実弥の肆ノ型から離れる事が出来、地面にも問題なく両足をつく。
「はあっ……はっ…」
連撃で肩が上下する。しかし、今日の勝負は一本のみ。
七瀬は再び短い息継ぎをすると、構えの姿勢を既に取っている実弥に向き合った。
「こないだの合同任務の時は見られたもんじゃなかったが、ちったあ動けるようになったんだなァ」
「柱の方…が三人も…尽力、して…はあ、くれましたから……!」
師範の蜜璃は勿論、杏寿郎に小芭内。
継子とは言え、一般隊士の自分の為に時間を都合しているのだ。
何か一つでも以前と変化した部分を見せなければ。
七瀬はその一心で稽古は勿論、今現在の実弥との実践に向き合っている。
『余力がもうあまりないけど…それでもこの型だけは打てる力はある…。次で決めよう!!」
蜜璃の元で稽古を始めた当初、全集中・常中の呼吸を取得した。
これは型を放つ時だけではなく、睡眠時も使用する事によって自分が持つ基礎体力の水準を飛躍的に上げる方法である。
会得したとは言え、戦闘時すぐに効果が出る物ではなく、積み重ねていく事が何よりも大切だ。
毎日毎日、二十四時間。絶えず常中の呼吸を繰り返していた七瀬は、体力を回復させる事も以前より容易になった。
『風柱、あまり息、切れてない。柱ってホント体力の水準が全然違うな』
『柱と毎日のように稽古してるってだけで、ここまで動きの質が上がるとはなァ。息も整うのが速くなってるじゃねェか』
己の継子を鍛えるってのも悪かねェかもなァ。
風柱がこんな事を思案しているとは、勿論七瀬は全く予想していない。