恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍
七瀬は自分が率直に考えた事を、師範の蜜璃に話した。実弥はいつも厳しいし、鬼殺以外で接する時も怖い。
しかし、あの三体の鬼に対峙する前に自分達に「各々が考えている戦法はあるか」と意見を聞いて来た。
「不死川さんは以前の合同任務で、一般隊士から出た意見を相手にしなかった事があったらしくて。これも伊黒さんから聞いたの! その時同行していた隊士の内二人が怪我をして……」
隊士を辞めるまではいかなかったが、なかなかの重症を負った。そして任務に復帰するまで半年の時間を費やしたのだと言う。
「そこから自分一人だけの判断で動くのは危険だから、合同任務の時は隊士に意見を聞くようになったそうよ」
「それ…私も少し耳にした事があります。でも私達に聞いてくる時もすっごく威圧的でしたよ?」
ふふっと目尻を下げて七瀬に笑いかける蜜璃だ。
実弥は柱の自分から見ても、確かに怖いと感じる瞬間はある。しかし、ぶっきらぼうな発言や態度の中にも時々思いやりが含まれているなと思う事も事実なのだ。
それを継子に伝えると ——
「風柱って凄くわかりにくい方なんですね」
「そうねぇ、誤解はされやすいかもしれないわ」
きっとそれは小芭内も同じなのだろう。
ネチネチとしつこい物言いに、言葉の節々にも厳しさが含まれている。しかし、彼より貰った手紙の中には先程蜜璃が言った思いやりを確かに感じた。
『蛇柱も風柱も、何だかもったいないな。きっとそうならざるを得ない理由があったんだろうけど』
ふうと一つ短い息をはいた七瀬は、改めて小芭内から届いた文に視線を落とす。
【柱は多忙】
これは師範の蜜璃と一つ屋根の下に同居しているからこそ、彼女もよく理解している。
今この時間も蜜璃が時間を都合し、自分と共に過ごしているのだ。
七瀬は隣にいる彼女に改めて「ありがとうございます」と礼を伝えた。
「それは私もよ〜。至らない部分が多い師範だけどね」