恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍
「蛇柱、ご多忙の中来てくださってありがとうございます。とても有意義な時間になりました」
七瀬は蜜璃と共に門扉まで小芭内を見送りに来ていた。
「伊黒さん、師範の私からもお礼を言わせて。大切な継子に指導をしてくれて本当にありがとうございました」
「文でも言っただろう。君と煉獄の依頼なら引き受けないわけにはいかないと。それだけの事だ」
「シャー」
「ふふ、鏑丸くんもありがとう」
小芭内の首に巻きついている白蛇が、珍しくその小さな体を動かし、蜜璃に穏やかな鳴き声を発している。横に立っている七瀬は自分との対応の落差に愕然としつつも、そんな様子をあたたかな気持ちで観察した。
『鏑丸さんも師範には心を許しているんだ…』
「沢渡、今日の稽古で感じた事を後日文にて送る。改善箇所が多く見つかった故、口頭ではとても伝えきれん。記録として残しておいた方が甘露寺も指導しやすいだろうからな」
「きちんと書いておかなきゃダメね……忙しさにかまけて全く思いつかなかったわ。伊黒さん、色々ありがとう。今後は私も指導記録を記しておきます」
「柱は多忙だ、ほどほどにしておけ。俺はもう行く」
短く会釈をした小芭内は、小走りで恋柱邸より去っていく。
彼の背中が見えなくなるまで見送った二人は、目が合うとにっこりと笑顔になり、屋内へと入っていった。
「これから七瀬ちゃんは、もっと強くなるわ! だって煉獄さんの指導にも伊黒さんの指導にも耐えたもの!」
「そうだと…良いんですけど」
「なるわよ。それに私も柱よ〜ほぼ毎日一緒に稽古してるからわかるの。七瀬ちゃん、あなたは必ず強くなる!!」
「師範…」
じわっと両目から涙が流れる継子を、師範はぎゅうと抱きしめる。
恋の柱とその継子。
師弟の絆は更に強固な物になろうとしていた。