恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍
—— それから一時間が経過した。
「えん、ばし……ら、私……もうついて、いけな……」
「どうした!? まだ終いではないぞ!!」
七瀬は荒い息と共に、地面にどさりと体を大の字に投げ出した。杏寿郎の指導はわかりやすく、剣技も蜜璃の言った通りキレが素晴らしく、充実した時間だった。
ただし、これは最初の十分のみで、その後は気分が乗った彼の激しい打撃をひたすら受け、あっという間に彼女の体力はゼロに近くなったのだ。
「沢渡少女! ほら、立て!! 次は俺にひたすら打ち込んでこい!!」
「いや……私は、もう限界、で…す。ごかん、べんを……」
「来い!!!」
この後、七瀬は意識がなくなるまで杏寿郎と稽古をしたのである。
★
「七瀬ちゃん、七瀬ちゃん。煉獄さんからお手紙来て、とっても楽しかったから是非またやろうですって! 良かったわね〜」
「あはは……私にも熱量が高い文が届きましたよ」
杏寿郎が恋柱邸を訪問した三日後、彼から二人に文が届いた。
蜜璃と七瀬は朝稽古後の湯浴みを済ませ、縁側で茶を飲みながら炎柱からの手紙に目を通している。
「あ、でもね。ちょっと気になる事も書いてあって……」
「気になる事……師範、それってどんな事なんですか?」
「うん、煉獄さんが言うにはね」
【甘露寺蜜璃 様
先日は大変に充実した時間だった!! ありがとう!
沢渡少女はなかなか見込みがあるな。流石は君の継子だ。 彼女と剣を交えてみて感じた事があるので、文に記しておく!】
「い、伊黒さん?? って蛇柱ですか?」
「そうよー伊黒さん! 蛇の呼吸は七瀬ちゃんが使う水の呼吸から派生した呼吸でしょう? 恋の呼吸が炎の呼吸と共通しているように、水の呼吸と蛇の呼吸もきっと似ている部分があるだろうから…伊黒さんに指導を頼んでみたらどうかって事よ〜!」