恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第65章 恋の継子、二つの蛇に睨まれる / 🐍
「ほら、もう泣くな。気持ちの切り替え! 続きをやるぞ」
「はい……ありがとう、ござ、います……グスッ」
五分後 —— 蜜璃の涙がようやく落ち着き、杏寿郎は自分で言葉にした通り、中断していた話をまた再開した。
「壱ノ型は基本の型、それから恋の呼吸は炎の呼吸の派生と言うのは先程も伝えたな? 二つの型は似ている事も多く、どちらの壱ノ型も大きく踏み込む動きから太刀を振るう技だ。これは雷の呼吸にも言える事だが、瞬発力が重要と言っても良いだろう。沢渡少女! 故に下半身がしっかりしていなければ難しいぞ!」
「瞬発力ですか……」
どちらかといえば苦手な部類かもしれない。
七瀬は自分が使う水の呼吸の型の動きを頭の中で思い浮かべ始めた。
参ノ型や玖ノ型のように足さばきが必要な型はあるが、瞬間的に下半身へ力を込めて、踏み込む動きは少ない。
水の呼吸は受け流す呼吸。対して炎の呼吸は攻撃主体の呼吸。
これは七瀬がそれぞれの呼吸の使用者を見て感じている事だ。
「私、苦手かもしれません……。攻撃するより受け流す方が得意です」
「確かに地稽古の時、七瀬ちゃんが積極的に攻撃してくる事は多くないわ。こちらの隙をついて型を放って来る印象です」
「ふむ、承知した! では沢渡少女、今から俺と地稽古をしてみよう」
「ええっ? い、今からですか??」
「そうだ! 甘露寺も付き合ってくれ。久々に君ともやりたい!!」
「はい、煉獄さん!! もちろんです!!」
炎柱の急な申し出に戸惑う七瀬に対し、即答する蜜璃。やはり元師弟の二人は、阿吽の呼吸と言うべきか。
なかなか立ち上がらない七瀬を二人は庭へ出るよう促し、実践稽古に向かったのである。