恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️
「お疲れ様です……っ!?」
他の鎹鴉が伝達済みだったのか、待機していたのか、一斉に隠達が森の中に入って来た。
目の端で行方不明の子供達が救助される様子も見える。
隠達が目を大きく開けて驚いているのは、顔を両手で隠しているゆずはを、無一郎が抱きながら現れたからだ。
「………霞柱様…俺がゆずはを運びましょうか…」
「いいよ」
気を利かせて聞いてくる隠に、無一郎はどっちかと言うと、余計なお世話の様に言った。
スタスタと歩いて森を抜けていく2人を、隠達は呆然としながら見送った。
★
後日ゆずはの元に、産屋敷からの文が届いた。
ゆずははゆっくりとその綺麗な字をなぞる様に見ている。
【ゆずはが無事で本当によかった。ありがとう】
最後に綴られた言葉の締めくくりに、不覚にもまた涙が出そうになる。
助かったのは、無一郎が来てくれたからだ。
あの場で自分は子供達を助ける事が出来なかったのに。
【ゆずはのお陰で、無一郎がまた一段と強くなれた】
自分のお陰なんかじゃ無い。
無一郎は初めから強かった。
それでもそう綴られている文を握ると、ゆずはは胸にぎゅっと抱きしめた。
天気が良くて、冷たいけど気持ちの良い風が屋敷に入って来る。
もうすっかり見慣れた庭を見渡しながら、ここが自分の場所だと今でははっきり言える。