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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️



安堵の笑顔のゆずはの目から、ポロポロと涙が溢れた。
大きな瞳から、溢れんばかりの涙は、大きな粒になってポタポタと地面に落ちていく。
笑顔だった顔の眉間に、皺がよった。


無一郎が助けてくれた安堵感。
ぶり返してきた、さっきまでの恐怖感。

そしてー。1年前に殺された両親の笑顔。

『ああ…無一郎さんがあの鬼を斬ってくれた…』

あの無一郎が、ゆずはの事で夕霧に苛立ちを覚えながら。

「…ぅっ…無一郎さん…」

両手で口元を押さえながら、目を瞑って泣いているゆずはに、無一郎はしゃがんでその顔を覗き込んだ。

ゆっくりと伸びた無一郎の手が、そっと目元の涙を拭った。
驚いて目を開けて、見えた無一郎の表情は、少し悲しそうでもあり、ゆずはを労わっている様にも見えた。


「…帰ろうか、ゆずは」

無一郎の言葉に、ゆずははコクコクと頷いた。
けれども、抜けた腰がお尻を上げさせてくれない。
その様子を見た無一郎が、ゆずはを抱き上げた。

「「!?」」

横抱きに抱かれて、無一郎の腕の中で顔を真っ赤にさせるゆずはを、銀子が物凄い形相で睨んだ。


「ナニシテルノヨ! 無一郎!!」

バサバサと2人の頭上を叫びながら、くるくる回っていた。

「五月蝿いな、早く報告に行きなよ」

時折頭を爪で引っ掻いてくる銀子に、無一郎はため息を吐きながら言った。

「無一郎さん、歩けるよ!手も怪我しているのに…」

スタスタと歩いている無一郎に、ゆずはは慌てて言った。

「この方が早く帰れるし……怪我は戻ったらゆずはが手当して」

そう笑顔を向けて言う無一郎に、顔を赤らめながら、もう涙は出てこなかった。戦利品の風呂敷に入っている柚子から、柑橘系の良い香りが2人を包んだ。

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