恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️
🐿️
トントン、トントン。
その時、外の門扉を叩く音がゆずはの耳に届いた。
「こんにちはー! 隠の幾田と申します。どなたかご在宅でしょうか?」
「まひろさんだ……!」
彼女はスッと立ち上がって玄関に向かう。
「ゆずはちゃん一人? 残念〜! まあ柱は多忙だから会えるなんて思ってなかったけどね!」
「まひろさん…確か恋人いましたよね」
幾田まひろ —— ゆずはの先輩隠であり、無一郎の事を「かわいい」と言った人物である。先日ゆずはが買いに行った柚子の礼と、見舞いがてら霞屋敷にやって来たようだ。
「霞柱様って美少年だけど、かわいいって感じなんだよね。凄く魅力的だとは思うよ?」
客間に幾田を案内したゆずはは、彼女が持参した薩摩きんつばを茶菓子として出し、幾田と向き合うように腰を下ろす。
「どう? あれから大丈夫?出かけるの怖くなったりしてない? 」
「ありがとうございます。怪我もせずに済んだし、霞柱様が鬼を倒してくれたお陰です」
「そっかあ、それ聞いて安心した〜じゃあちょっと聞きたい事があるんだけど…良い?」
「はい…何でしょう」
ゆずはの脳内は、疑問符がふわりふわりと漂い始めた。幾田の話が進むにつれ、彼女の顔と背中の温度が急上昇していく。
「どの現場に行っても事後処理後はその話題で持ちきりなの。あの無関心の霞柱様が専属隠を横抱きにして、そのまま帰宅したんだから…付き合ってるの?ってみんな騒いじゃって」
「………」
ゆずはは目の前にあるほうじ茶をゆっくりと一口飲んだ後、きんつばも口にした。しかし、想定外の話をされてしまい、味がよくわからなくなっている。
「んー、美味しい!! これ炎柱様から教えて貰ったの。九州へ行かなきゃ買えないかなあって思ってたら日本橋の百貨店に売っててね…あれ? どうしたの?」
「霞柱様、と誰が…付き合ってるん、で、す、か?」
「え? だからゆずはちゃんが」
「……」
瞬間、ゆずはの脳内にはあの時の出来事が一瞬にして蘇った。