恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️
🐿️
「ったく、さっきのガキ達も腹が立ったけど、柱のそいつはもっと腹が立つ…」
「そうだ…子供達!! どこなの??」
「あー、あいつら?」
無一郎にかけた血鬼術とは違う術を使用して、森の中のあちこちに閉じ込めている。
先程夕霧が持っていた人間の足は、子供達より前に捕まえた通行人の物だと言う事だった。
「寺子屋の帰りか何か知らねーけど〈祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〉!!ってうるさくてさあ」
「祇園精舎…???」
「何だよ、知らねえの? 平家物語」
「平家……源氏じゃなくて?」
ゆずはのこの言葉を聞いた夕霧は、何故か急に嬉々とした表情になった。
「何、あんた! 源氏物語知ってんの?? 俺の名前、そこからついたんだよ。あのお方が気に入ってる書物なんだって」
「………」
思いつきで言っただけの発言が、何故か目の前の鬼の心に響いたらしい。ゆずははしばし複雑な気持ちを味わっていた。
「あの女に似てるだけじゃなくて、俺の気持ちも良くしてくれるなんて……あんた本当最高だね。早く喰いたいなあ」
自分を卑しい目つきで見ながら舌なめずりをする夕霧に、ゆずはは背筋がブルッと震えてしまう。どうにかこの鬼から逃れる方法はないのか。
無一郎は術によって閉じ込められたままだ。ならば ——
「はあ? 俺があんたにかけた術がどんな物か知りたい? 別にいーけど」
『よし……機嫌が良くなった。これで少しでも時間が稼げれば!!』
たまたまゆずはの発する言葉に気分を良くした鬼。彼女は一か八かの勝負に出た。
「俺の血鬼術って空間を自在に操れるんだよね。因みにあんたにかけたのは…」
夕霧は右人差し指で上空を指した。ゆずはが視線をやると、空は水色である。
「明るいよな? でも本当はこんな感じ」
右手を頭上に向けた鬼は、空を掴み取るような仕草をした。
すると ———
「えっ?? 夕方???」
彼女の視界に入ったのは橙に色づいた空だ。