恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
「この下も見たいんだ。だから向こうに行こうよ」
「……うん」
包まれた両頬を撫でながら、彼は柔らかいキスを一つ唇に落とした。ゆっくりと目を開けると、にっこりと穏やかな表情の無一郎くんがそこにいる。
「ねえ、せっかくだからさ」
「な、なに?……わっ、ちょっと恥ずかし……」
軽々と私の体を横抱きにした彼は、真っ直ぐと天蓋付きのベッドへと歩き出した。再びドキドキと高鳴る鼓動が、無一郎くんに聞こえてしまうんじゃないかと気が気でない。
「お姫様抱っこするなら、ドレスの方がハマったかもね」
「もっと恥ずかしいと思う……」
ベッドにゆっくりとおろしてくれた彼は、ダッシュボードの間接照明をつけ、部屋の電気を消した。
水色のカーテンが降りると、あっという間に別空間へと様変わりだ。
部屋の中は電気を消したから、ぼんやりとしか見えない。
けど、ベッドの中では目の前の無一郎くんの姿がよく見える。
「七瀬、好き」
「んっ……」
私の体の上から覆い被さって来た彼は【好き】と繰り返し声に出しながら、啄む口付けを落としてくれた。
両手同士がきゅっと絡み、互いの掌の温度がじわりと混じり合う。
ちう、と唇が吸い上げられた。
「一緒に脱ごうよ」
「ちょっと寒くない?」
「かけ布団かければ、あったかいよ」
彼が私の体の下から布団をゆっくりと引っ張り、全部引き抜くとまた覆い被さって来る。
「どう? これで寒くはないよ」
「そうだね」
ふふッと笑う私の唇にまた一つキスが落ちた。無一郎くんは着ていたフリースのパジャマを一枚一枚丁寧に脱いでいく。
そんな彼の様子を見ながら、私も無一郎くんの下でパジャマを一枚一枚脱いだ。
「本当だ。布団一枚あるだけで全然違うね」