恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
「これ、どうやって食べようか。もったいないけど二つに割っちゃう?」
「七瀬は左からかじってよ」
え、かじるって……あ、そう言う事?
無一郎くんはチョコの右側を口で咥えると、目線だけで私を誘って来た。
心臓がドキンと跳ね上がると、それから急速に鼓動が忙しくなる。
彼はゲストルームに置いてあったフリースのパジャマを着ていて、普段おろしている長髪は一つに結んでいる。
いつも私の部屋に泊まりに来た時とほぼ同じ服装と髪型だ。
だけど、このゲストルームの雰囲気と自分も彼と揃いのパジャマを着ている —— この普段とは少し違う状況に気持ちも高揚中なのだ。
わっ……こんなのすぐ食べ終わっちゃいそう。
チョコを咥え、右を見てみると数センチ先に無一郎くんの横顔がある。
「……」
「いくよ」
コクンと無言で頷いた後、互いにチョコをパキ、パキ、とかじっていく。三口目を食べた瞬間、チョコの味がする無一郎くんの唇が私の唇へとあたった。
このチョコはビター味だから、チョコ自体はやや苦めの大人向けの味だ。でも彼とのキスはとても甘い。
唾液とチョコが混ざり合う中、ちうと私の唇を吸い上げた無一郎くんはゆっくりと顔を離した。
彼の口元は無造作にチョコが付着していて、何だか少し色っぽい。
ティッシュを取ろうとした瞬間 —— 自分の唇周りがあたたかい舌でなぞられた。
ツ、ツ、ツ……と時間をかけて味わう動きに反応した私の下腹部は、小さな穴から透明な欲をたらす。
「チョコは結構苦かったけど、七瀬のここはいつも甘いよね」
チロ、とダメ押しにもう一度唇を舐められ、大きな掌に包まれた両頬は耳まで熱くなってしまった。
「パジャマの君も凄く可愛いんだけど…」
「う、うん」
ドクンドクン、と心臓が飛び出てしまいそう。無一郎くんの顔がまともに見れない。