恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
そして時間は経ち、夕方になった。
私はあれからすぐドレスに着替えて、館内スポットで無一郎くんにたくさん写真を撮って貰った。
だから、テンションはかなり上がっている。
聞いていた通り、館内を歩いていてもすれ違う人がいなくなった。
いたとしても、私達二人以外は後一組だけ。
「そろそろ無一郎くんの仮装も見たいなー。人も少なくなったよ」
「君はそんなにあの衣装を着た僕が見たいわけ?」
見たいよ! と一言告げ、周りに誰もいない事を確認した後、彼の左頬に小さなキスを贈ってみる。顔を離すと、めずらしく固まっている無一郎くんがいた。
ふふっと笑った私は、彼と手を繋いでゲストルームへと戻った。
ヒールを履いてるから、スキップしたい衝動を必死で押さえつけたんだけど、地面から多少は浮いていたんじゃないかな。
「やっぱり似合うー! かわいい…って男子は嬉しくないんだよね、この形容」
「そうだね」とボソッと一言だけつぶやいた無一郎くんは、あっという間に衣装を脱ごうとしてしまう。
「ちょっと待って、ちょっと待って。一緒に写真写したいし、無一郎くんだけの写真も撮りたい〜!! 自撮り棒も借りて来たから、一緒に撮ろう? まずはお庭に……」
「嫌、君一人で行って」
えええ、それじゃあつまらないよー!!
私は何とか彼を説得して、この部屋だけで写すと言う約束を取り付け、無一郎くん一人の写真と私と二人での写真をスマホに収めたのである。
無事に写真撮影をした十分後、お風呂に入りたいと言い出した無一郎くん。一刻も早く脱ぎたそうにウズウズとしているのが、もう手に取るようにわかる。
「私はまだドレス着てたいから、先入って来て良いよ」
スカートの裾を右手でつまんで、左手で浴室を促すと彼は ——
「僕は七瀬と一緒に入りたいんだけど」