恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
「じゃあ次は無一郎くんの衣装だね」
「僕のは適当で良いよ」
「出た〜、無一郎くんの常套句! そんな事言わずに選びに行くよ」
私のドレスはしっかり吟味してくれたのに……何でいつも彼は自分の事となると、こうなるのかな。
面倒な気分を隠そうとしない無一郎くんの手を掴み、半ば引っ張るようにして、彼の衣装を選びに、該当のコーナーへ向かった。
「冗談でしょ? 何で僕まで足を出さないといけないの?」
「夕方以降は利用するお客さんしかいなくなるんだって。だから私達ともう一組だけなの。すぐに着なくても良いからさあ」
この帽子もひらひらしてて、かわいいんだけどな。
ダメ押しでハンガーに付属された白いフリルハットを、私が強調するように見せると、更に眉間に皺が寄った。
無一郎くんは高校時代の三年間で十センチ以上背が伸びた。
入学時私と同じ背丈だった彼は、もういない。
少し上から見下ろされる事も当たり前になっている現状だ。
だから【男の子】って言うより【男】って印象なんだけど……髪は長いままだから、中性的なイメージは前と変わらないんだよね。
ハット以外は黒地にストライプ柄のマントと同じデザインの短パン。袖がフリルになっている白いフィッシュテールシャツ…と言う組み合わせだ。
「私のドレスがフィッシュテールデザインでしょ? 無一郎くんとリンクコーデになるかなって思ったんだけど…ダメかな」
「リンクコーデ? って何?」
「服装に共通点があるって事だよ。それにこの衣装は無一郎くんじゃないと、着こなしが難しいんじゃないかな」
「僕にしか着れないって事?」
「……うん」
手に持っていた衣装を彼に渡すと、思案を始める無一郎くんだ。
じいっと私が熱視線を送っていると、彼はふうと一つ息をつき、近くにある姿見の前に歩を進めた。
手に持った衣装を体の前に当てると、二、三回頷いたのちに顔を私に向ける。
「七瀬の言う通り、確かに悪くないかもね」
——— やったあ!!