恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
施設名は “ breathing(=英語で呼吸の意)”
チェコのプラハ城を参考にしていると言う、ゴシック様式の建物だ。
「あの尖った屋根…って言えば良いのかな? 凄く素敵!!」
「芸術的な事は僕もあまりわからないけど…異国の雰囲気はよく出てるね」
外観でこれなら、中はどうなのだろう。やっぱり雰囲気が出る作りをしてるのかな。
じいっと建物を凝視していると、隣から「寒いから早く中へ入ろう」と声がかかった。
あ、いけない。いけない。ついつい見入っちゃった。
建物の写真、それから二人での自撮り写真を写した後、私と彼はドレスハウスへと歩を進めた。
★
「中もすごーい!! 本格的だね」
「世界史で中世の事を習った時、凄い時代があったんだなってぐらいしか感じなかったけど……」
受付を済ませた私と無一郎くんは、スタッフさんに案内されたゲストルームへとやって来た。
ここには天蓋付きの大きなベッド、アンティークを思わせる家具がバランス良く設置されている。ソファーに、四人がけのテーブル、ドレッサー等だ。
キャリーバッグをベッド近くに置いた私は、部屋の中をもっと見たくなり、まずドレッサーに向かう。
テーブル部分にかかっていたクロスが気になったからだ。一体何があの下にあるのか。
何の気なしにそこをめくってみると ——
「あっ……」
「七瀬?どうしたの?」
「うん、見て…」
「へえ、流石ラブホテルを改装した施設だけあるね」
小さな声を出した私の元に、無一郎くんが近づいて来た。見るように促した私の後ろから覗き込むように確認する彼だ。
そこにはアメニティ類に溶け込むように、避妊具も置いてあった。剥き出しではなく、中身が見えないようポーチに入っている。