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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️



それから更に三十分後、居酒屋「ひょっとこ」のバイトに行く為の準備をしているとスマホが震えた。

通知画面には【無一郎くん】の文字が表示されている。急いでメッセージを開くと「当たったよ」の一言。

やった! 無一郎くんさすがだー。
外れてもどのみち彼と週末二日間過ごしたかったから、前もって休みの申請をしておいて正解だった。


でも居酒屋は週末が多忙なので、店長の鋼鐵塚さんは烈火の如く怒り狂い、終業後しばらく追いかけ回されたんだよね。

苦肉の策で私が好物のみたらし団子十本と連勤をする……と言う条件を涙を流しながら訴えると、店長はしぶしぶ許可してくれた。

ビバ! みたらし団子!

私も好きな甘味だから十本も人にあげるのは正直きついんだけど、これも大好きな彼氏とのイベントの為、腹を括る。

和菓子大好きな友人を友達リストから検索し、極上の品を取り扱っている店を教えて貰うべく、連絡した。







二月第一週の土曜日。
私と無一郎くんは新幹線に乗車して、ここドレスハウスまでやって来た。

前日の金曜日、店長にみたらし団子の差し入れをしたら、私がたじろいでしまうぐらい大泣きしてくれ、奮発した甲斐があったと言う物だ。

三日間の連勤はキツかったけど、このイベントを楽しむ為にとにかく頑張った。


「本当に良かったあ、ここに来れて」

「大袈裟だよ、新幹線に乗車さえしてれば目的地に着くじゃない」

「うん。無一郎くんの言う通りなんだけど、今日明日の休暇を取得するのに色々あってね」

「ふうん、そうなの」

「うん、そうなの」

すると —— キャリーバッグを持っていない私の左手がきゅっと握られた。無一郎くんが手を繋いで来たのだ。

そして「ありがとう」とかろうじて私の耳に届く声量で、伝えて来る彼にどきりとさせられてしまう。


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