恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
次の日 ——
「七瀬、スマホのアラーム鳴ってるぞ。もう八時だ」
「ん…? はち、じ?」
「朝食は出ないんだろ? チェックアウトまでに行こう」
そうだった。宿泊プランにつく食事は夕食だけだ。うーん、と両手を思い切り伸ばした後は、両方のこめかみを人差し指でぐりぐりと刺激した。
血流がゆっくりと目の周りを巡る感覚。瞼、頬とマッサージをして、横に寝ている炭治郎に向き合う。
「おはよう、何時から起きてたの?」
「六時に目が覚めて、それから君の顔を見ながらベッドで過ごしてた。一回トイレ行く為に出たけどな」
「わあー……そうなんだ」
店の手伝いで早起きするから、体のリズムが朝型になっているんだ。そんな事を朝から眩しい笑顔で私に言う炭治郎。
「昨日の豪華なディナーも良かったけど、コンビニで買うパンやおむすびも好きだなー、私」
昨日の情事の後、二人揃って寝てしまった。
シャワーで心身ともにさっぱりと切り替え、少し遅い朝食を彼と食べている。飲み物は昨日と同じで私は紅茶を、炭治郎はコーヒーをチョイスした。
「コンビニのパンたまに食べると、うちもパン作り頑張らなきゃなって気持ちになるよ。美味いし、発想も広がる。まあ俺は生地の仕込みを少しやってるだけだけど」
炭治郎の実家のパン屋さんは、お母さんがパンの考案や生地作りを担当していて、彼や禰󠄀豆子、二人のすぐ下の弟の竹雄くんが接客等をやっている。
人気のベーカリーでお客さんが途切れる事はあまりないけど、炭治郎本人はパンよりお米が好みらしい。今朝もおむすびを中心に購入しており、パンは私が買った商品を半分お裾分けした物だ。
「チェックアウトの後は駅に戻る? それとも観光する?」
「ドレスハウスに泊まるのがメインだったから、あんまりそこまで考えてなかったんだよなー、そうだ。七瀬、まだチョコが一個残ってるよな?」
「あ、そうだね! ピンクのチョコ。食べなきゃ」