恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
「チョコは苦いけど、七瀬のここは甘いよな」
「……!」
チロ、とダメ押しにもう一度唇を舐められた。
大きな掌に包まれた両頬が熱い。ついパタパタと右手であおいでしまう。
「ドレス姿の君も凄く可愛いし、綺麗だなあって思うんだけど…」
「う、うん」
ドクンドクン、と心臓が飛び出てしまいそうだ。
ふっと頬を包んでいた温もりが消えたかと思うと、今度は膝裏と脇裏にあたたかな感覚が移る。
「この下も見たい。良いよな?」
軽々と私の体を横抱きにした炭治郎は、柔らかくも有無を言わせない口調で言い放った。
さっきまで「恥ずかしい」と言って頬を染めていた彼とは別人だ。
一度スイッチが入ると、炭治郎はとても男っぽくなってしまう。
私はいつもこのギャップにやられて、素直に従う流れなのだ。
ソファから歩き出した恋人は、迷う事なく天蓋付きの大きなベッドへと進んでいく。ちゃんと部屋の電気を消すのも忘れずに。
「わっ……ふかふかだな、このベッド」
私を静かに下ろした彼。
履いているブーツを脱ぐと、ダッシュボードの間接照明をつけ、すぐに真上から覆い被さって来る。
それからキスを一つ私の唇に降らせた炭治郎は、パステルグリーンのカーテンをそっと下ろした。
部屋の中はレース越しに見えるけど、ベッドの中には私と彼の二人だけ。普段着ない衣服に、特別感がある食事と部屋。
ラグジュアリーな空間はこの時間をとても大事な物へと変えてくれた。
「七瀬」
「なあに?」
ふっと笑顔になった炭治郎が名前を呼びながら、口付けて来る。
ちうちうと啄み合うキスはくすぐったいけど、心地いい。
「君とここに一緒に来れて、本当に良かった。大好きだ」
「私もあなたと一緒に来れて嬉しい。大好きだよ」