恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
「……! 七瀬、か?」
「うん、どうかな」
彼が立っている床には絨毯が敷かれており、もうヒールの音は響かない。ゆっくりと足を進めながら炭治郎に近づいていく。
「……そんな…ドレスもあるんだ」
「せっかく着るんだったら、驚いてもらおうかなあって思って」
私が選んだのは上がホルターネック、下はチュールスカートで色は緑。セパレートタイプで下は足が見えるフィッシュテールドレスだ。
「お腹も…見えてる」
「チラ見せね。夜だし、見てもらうのが炭治郎だけだからこれにしちゃった」
「髪も……何か大人っぽい」
「ふふ、着替えてる間だけ三つ編みに結んでてね。良い感じにウェーブになっちゃった」
彼が左手に持っている仮面をそっと取り、どう?と自分の左目に当てた。すると、カシャッとスマホのカメラ音が二度程鳴る。
「ちゃんと二人で撮れるように、自撮り棒も借りて来たよ。どこで撮る?」
「そうだなあ……」
★
「ねえ、ちょっと撮りすぎじゃない?」
「そんな事ないぞ! まだ撮りたいぐらいだ」
館内のエントランス —— 施設に入って一番目に付く場所で、私達は二人での写真を写していた。
笑顔、変顔、真面目顔に加えて、どちらかの頬にキスしながら撮ったり、ばっちりキスしながら撮ったり、もう色々。
あれだけ恥ずかしいって言ってた炭治郎は、気分が乗って来たようで凄く楽しんでる。仮装してからずっと笑顔だもん。
宿泊プランに当たってないと、この顔は見れなかったかもなあ。
改めて彼の強運に感謝した。
「なあ。チョコってもう部屋に運ばれてるのかな?」
「どうだろう? 今は…十八時半を回ってるね。お腹もすいて来たし、夜ごはん食べなきゃ」
宿泊プランに当たった利用者は追加金額を出すと、夕食も部屋で食べる事が出来る。この夕食がなかなかの絶品との事だ。