恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️
〜炭治郎と過ごすバレンタイン〜
「何それ、面白そう!! ドレスも着たいし、炭治郎の仮装も見たい〜!」
「そ、そうか……」
新しい年が明けた一月上旬の週末、自宅には恋人が来ている。
同級生であり、高校時代から付き合いがある共通の友人、善逸。彼からとある施設の事を教えてもらったらしい。
その話題に私がテンション高く反応すると、彼は何だかちょっと引き気味だ。
何故?
シンプルな疑問が浮かんだ為、本人にそれを聞いてみる。
すると ———
「仮装が恥ずかしいかあ。気持ちはわからなくもないけど……去年は一緒に渋谷行ってくれたじゃない?」
問いかけてみると、あれはみんながみんな仮装して歩くから気にならなかったと言う。
うーん、そっか…そうだったのね。
「去年は無理させちゃったんだね。今更だけどごめん……」
「いや、七瀬が謝る必要は全然ないよ。楽しかったのは本当だし」
「そう?」
「ああ! いつもと違う君が見れて、凄くテンション上がったしな」
「同じ、同じ〜」
頭一つ分上にある炭治郎の首に腕を回せば、抱きしめ返してくれる彼が愛おしい。高校生の終わり頃から伸びた身長は百七十五センチを超えた。
「炭治郎の事好きって子、多いんだよね。俺めっちゃ悔しー!」
これはドレスハウスの情報を教えてくれた善逸の言葉。
被害妄想がやや強めな彼だけど、実はギャップがあって良いよね〜と周囲の友人達は言っている。
「そう言えば宿泊プランを利用出来るのは、一日二組限定だって聞いたな」
「じゃあさ。夕方までは施設内を見学して、夜間に仮装しても良いんじゃないかな? それなら私達以外のお客さんは二人しかいない事になるし……」
どう? ——— じいっと念を送るように彼の瞳を見つめると。