恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「昨日の君は本当に綺麗だった。ドレスもここでも」
「……杏寿郎さん、朝から情熱的すぎます……」
ゴロンと背中を見せる七瀬だが、すぐに彼に引き寄せられる。同じシャンプー、同じボディソープの香りが彼女をゆっくりと包み込んだ。
「俺は本当の事を言ったまでだが?」
『なんかすごく…幸せだな…』
ちらっと目の前に視線をやれば、昨日着ていた自分達の衣装がハンガーにかけられている。
落ち着いた臙脂(えんじ)色のドレスは、ほんの少しだけ七瀬を大人にしてくれた。
『また着れますように』
心の中で細やかな願いを唱えた彼女は、杏寿郎の方に体を向けた。
「おなか、すいてきました」
「俺もだ。朝食は館内で食べれるのだったな? 行くか」
「はい!」
二人は朝の光が差し込む中、ごく自然な流れでキスを交わした。
それより一時間後 ——
着替えを済ませた二人は、槇寿郎や瑠火と共に朝食を食べ、荷物をまとめ終わった所だ。
「宿泊は無理でもまた来年来ても良いかもしれませんね。別の色のドレスも着てみたいし……」
「む? 七瀬、それは何色だ?」
「そうですね〜。赤系を今回着たから、青系……」
「ないな! 却下だ、この話は終いにしよう」
え〜と杏寿郎に詰め寄る七瀬だが、彼はダメだ!の一点張りだ。何が何だかわからない彼女。
それから支払いを済ませた七瀬と杏寿郎は、槇寿郎・瑠火と共に観光にでも行くか。そんな話をしていた矢先に出入り口から学生の集団が賑やかに入って来た。
「七瀬さん、お久しぶりです!」
「えっ? 千寿郎くん、どうしてここに?」
「修学旅行です! 今日の工程はミステリーツアーで。行き先がわからない仕組みになってたんです。俺も今朝ドレスハウスに行くと知りました」
学生達の中から手を振りながら挨拶してくれたのは、何と杏寿郎の弟であった。