恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「東北と聞いて、じゃあ行き先は同じですねと話していたんです。私も流石にこの偶然に驚いています」
「何だか見えない力に引き寄せられているようだな」
千寿郎と別れ、四人はドレスハウスの外に出て来た。
槇寿郎と瑠火は互いに驚きはしているが、口元には笑みを浮かべている。
「東京に帰省しないと煉獄家の皆さんにお会い出来ないから、私はとっても嬉しかったです……!」
「だそうです、父上! 母上!」
七瀬の一言に心が綻んだ煉獄家の三人。
もう一度ドレスハウスの外観を振り返り、目当ての観光地へ皆は向かっていった。
『あ、あの子からメッセだ』
上着のポケットに入れていたスマホがブルブル、と振動したのを確認した七瀬。彼女はホーム画面をタップし、友人より届いた文面を読む。
「ドレスハウスはどうだった? 七瀬のドレス姿を見た煉獄先生の反応が気になるー! あ、そうだ。先生のテーマカラーって赤だよね? こないだ義勇さんと行った時青のドレス着たの。だから今度は……」
『そっか、だから青はダメだって』
友人からのメッセージを全て読んだ七瀬は、左を歩く恋人をチラッと見上げた。先程かわいい嫉妬を見せた杏寿郎に愛おしさがいっぱいになる。
「どうした?」
「いえ、杏寿郎さんが彼氏で良かったなーって思っただけです」
「? そうなのか?」
「はい」
何を今更言うのか。
しかし、当の杏寿郎の心はほっこりとあたたかくなっている。繋いだ七瀬の手をきゅっと繋ぎ直した彼は、少し先を歩く両親の姿を見た。
そこには自分達と同じように、恋人繋ぎをした槇寿郎と瑠火がいる。東から照らす朝日を受けながら歩く両親は、とても眩い。
—— 将来あんな風になれれば。
二人を未来の自分達に重ねながら、杏寿郎は七瀬との一歩をまた先へ進めた。
〜杏寿郎と過ごすハロウィン〜
終わり