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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥



『本当によく似合っていたな』

臙脂(えんじ)色のドレスに触れた杏寿郎は、恋人がこれを着ていた時間をゆっくりと思い出す。
母が選んだドレスは、杏寿郎の本能を見事に刺激したのだ。


『そう遠くない未来にまた見れる事を願おう』

またドレスを一度撫でた彼は、ソファに向かうと寝ている七瀬を静かに横抱きにした。そのまま天蓋付きのベッドまで運ぶとゆっくりと寝かせ、掛け布団を首元まで引き上げた。


『君の未来に俺はいるか?』
「んっ……杏寿、ろさん……だーいすき」

『……!! これはまた何ともタイミングが良いな』

右掌を口元に当てた杏寿郎は、顔の筋肉が緩むのを押さえきれないようだ。

「おやすみ、七瀬。良い夢を」

彼は彼女の前髪をゆっくりかき分け、出て来た額に小さなキスを落とし、唇にも口付けた。
部屋の電気を消して布団に入ると、杏寿郎は小さな体を抱きしめる。

そしてゆっくりと両の瞼を閉じた ———。









濃密な一夜が明け、朝になった。
ブーブーブーと一台のスマホがヘッドボードの上で振動している。時刻は午前七時だ。

シーツの中からぬっと細い手が出てスマホを探し当てるように動くが、それよりも早く大きな手がバイブ音を止めた。

「あれ?とまっちゃった…んっ」
「おはよう、もう起きるのか?」

ちうと七瀬の唇にあたたかなキスが届く。杏寿郎だ。
じっと間近で朝日を思わせる双眸に見つめられた彼女は、ぽっと顔をほんのりピンクに染める。

「おはようございます。じゃあまだ杏寿郎さんにくっついていても良いですか?」
「ああ、無論だ」

ぴたりと寄り添うように隣合っている二人の隙間が、また埋まる。
体温が高めの杏寿郎の体は七瀬の意識を、再び眠りの世界へと誘うが ———

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