恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
七瀬は前世で彼の継子を務めていた時も、勝負と名のつく物は全く勝てなかった。剣術だけではなく、娯楽さえもだ。
「七瀬」
「んっ、どうしたんですか?」
「そろそろ機嫌を直して貰えないか?」
「別に……怒ってるわけじゃ……」
椅子から立ち上がり、天蓋付きのベッドに腰掛けた七瀬の横に杏寿郎が座った。二人の視線が合うと、彼が微笑みながら彼女の肩をそっと抱き寄せる。
「Shall we make love?」
「……えっと、その…」
「俺は先程の勝負に勝ったぞ」
「うっ……」
はあ……と再び深海に沈んでいくようなため息をした七瀬。やはり杏寿郎には敵わないと白旗を上げ、そして…。
「I would……like to. (喜んで)」
「む、そこは”love”ではないのか?」
「細やかな抵抗です」
「意地を張る君も好きだ」
ふっと口元に笑みを乗せた杏寿郎は七瀬の顎を掴んで、そこへ口付けをゆっくりと落とした。
啄み合う中、彼の左手が彼女の右手をとらえると指が絡められる。
「んっ、きょうじゅ…さ…」
「どうした?……」
顎に触れられていた手が耳たぶ、首、鎖骨の順に辿ると、トンと七瀬の肩がベッドへ沈んだ。
「ドレスがシワになると大変です……」
「どのようにすれば良いのだろうか」
「もう…わかってるくせに」
「七瀬が言ってくれねば俺はわからない」
いつものやりとりが始まった。杏寿郎に組み敷かれている七瀬は、ふうと息をはく。
「杏寿郎さん」
「ん? 何だ」
日輪の双眸に甘い情欲と、悪戯心がゆらゆらと浮かんでいる。