恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第18章 忘却の夢炎(むえん) / 🔥
1週間後………
もう何人の女の人が彼を見ているのだろうか。
隣を歩くのは常盤色(ときわいろ ※1)の浴衣をサラリと着こなしている杏寿郎。もちろん人間の姿。
私は杏の柄が散りばめられた中紅花(なかくれない ※1)の浴衣を着ている。
町の様子が物珍しいようで、女性陣の視線には全く気に留めず。
まあ…予想出来た事だけど、私に対する視線が痛い、痛い。仕方ないじゃない。
文句なら横にいる杏寿郎に言ってよ……とどうにもならない事を考えてしまう。
悶々と私が考えている事なんて、つゆ知らず。
「凄いな。賑わいが!」
目をキラキラさせている彼を見ると、この刺さるような視線なんてどうでも良くなってしまう。私は絡めてある手を再度繋ぎ直す。
「ん?どうした?」
優しい眼差し。穏やかな笑みを浮かべる口元。
「うん、幸せだなあって」
私はもう少しだけ、彼に寄り添った。
「幸せ……か」
杏寿郎は噛み締めるように呟いた。
「どうしたの?」
「いや、俺も同じだなと思っていた所だ」
「良かった。同じ気持ちで」
「…………」
「…………」
沈黙と一緒に歩く。全然気まずくない。これって波長が合う証拠なのかな?恋人がいる先輩隊士が、先日の任務帰りにそんな事を言っていたのを思い出す。
———————————————
※1………松や杉などの常緑樹の葉の色のように茶みを含んだ濃い緑色。
英語で言うevergreen。常緑(樹木が一年中落葉しないで緑であること)不朽(いつまでも朽(く)ちないで残ること)を意味する名詞・形容詞。
※2………明るい薄みの紅色