恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第18章 忘却の夢炎(むえん) / 🔥
「うん、すごく嬉しい!!」
私は彼の両頬を包んで、ちゅっと口付けをした。
「鬼の杏寿郎も素敵だけど、人間の杏寿郎も素敵だよ」
「君がそんなに喜んでくれるとはな。やった甲斐があると言うものだ」
心底、嬉しそうな表情の恋人。
「正直、今の杏寿郎は誰にも見せたくないんだけど。この姿なら町を一緒に歩けるかなあ?」
私は彼にずいっと近づいて、改めてその姿を見回す。すると珍しく杏寿郎の頬が赤く染まっていく。
「あれ。顔赤いね?珍しい…」
「こんな近い距離でこうやって君に見つめられるのは初めてだぞ。それは赤くもなる」
「え、でも口付けの時もこれぐらい近づくじゃない」
「君はいつも、目を閉じているだろう?」
「言われてみれば、そうだね」
……どうしよう。可愛いんだけど。私は愛おしさでいっぱいになって、ギュッと彼を抱きしめた。
「そう言えば来週、町で夏祭りがあるんだよ。一緒に行かない?」
「祭り……か?」
「そう」
行きたい………その念を杏寿郎に送ってみると、通じたのか、了承の返事をもらえた。
「じゃあ約束しよ?」
私は彼から体を離すと、右手の小指を恋人に差し出した。
そんな私に合わせてくれるように、大きな小指を絡めてくれる。
「こないだ、可愛い浴衣見つけたの。着て行くね」
「うむ、楽しみにしておこう」
小指同士を離した後は口付けでも約束。
私は自宅に帰ってからも顔の表情が緩みっぱなしだった。