恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
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「杏寿郎さーん! 一ヶ月振りです……」
「む? そんなに期間があいただろうか……」
「あいてますよ〜。毎日メッセしてるけど、こうやって直で話すのは三日?振りだし……って確かに言われてみればですね。久しぶり感はないかも」
「そうだろう?」
ドレスハウス最寄りの駅を集合場所にした七瀬と杏寿郎は、改札を出た先で再会した。
群青色でストライプのキャリーバッグを持参した彼女に比べると、杏寿郎は背中に背負ったリュック一つだ。
「ふふ、男と女の違いですね。面白い」
「衣装は現地に行けばあるのだろう? 宿泊出来るんだ。寝巻きはあるだろう」
ロータリーに出た二人の手は当たり前のように繋がれている。
【はやて】に乗って来たと七瀬が言えば、杏寿郎は【はやぶさ】に乗って来たと言う。
「ネイル、緑にしてみました。はやてカラーにはやぶさカラー」
「珍しいな。初めて見るような気がする」
笑顔になった七瀬の指先を愛おしそうに見つめる杏寿郎。タクシーに乗車した二人は着くまでの二十分間、ドレスハウスに詳しい女性乗務員からたくさんの情報を与えてもらった。
「では良い旅になりますように。ご乗車ありがとうございました!」
ブロロ、とエンジン音を鳴らしながら、タクシーが去った。
よく話す方でしたね…と七瀬が杏寿郎に笑いかければ、再び彼女の左手に彼の右手が絡む。
「杏寿郎さん、本当にあたたかいですよね。これからの時期はとっても助かります」
「む、俺はカイロではないぞ! だが七瀬専用と言うのは悪くはないな」
「何ですかそれ!」
そんな会話を交わしながら、二人はドレスハウスへの歩みを進めて行った。