恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第18章 忘却の夢炎(むえん) / 🔥
「杏寿郎」
「どうした?七瀬」
私は前から考えていた事を彼に伝えてみる事にした。
「私と同じ人間の見た目になる事って出来る?」
「擬態か?」
「あ、うん。多分それだよ」
「出来ない事はないが。急だな?」
彼が私の左頬を大きな手で包んだ。
長い爪が耳に当たりそうになるけど、いつもそうならないように気遣いしてくれる。
「一度は人間の杏寿郎を見てみたくって……」
「なるほど」
上弦の参を表す、左右に分かれた二つの刻印をぐるりと囲むように燃える緋色の双眸。それが私をじいっと見つめてくれる。
本当に綺麗な目だなあ。
彼の右手に自分の左手を重ねると私は目を閉じた。
「ん………」
恋人からの優しい口付けが唇に届く。
ちう……と一回温かいぬくもりが当たった後に唇が離れていった。
目を開けてみると、そこには ———
「わあっ」
私は思わず彼の目を覗きこんでしまう。
「刻印と目尻の目弾(めはじき=アイライン)がない!!爪も橙色じゃないし、短いね。ねえ、牙って……わあ……ない!!」
凄い!どこからどう見ても、私と同じ人間。
しかも、変わらずカッコいい!あ、これは当たり前か。
「そんなにこの姿が嬉しいか?」
彼が不思議そうに私に問いかけて来る。