恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「お前の中にはいりたい」
「……わ、わかった」
涙がそれぞれ義勇の指で拭われると、七瀬の口からほう……と深く長い息が空気と混ざりあった。
「あの、義勇さ、ん……えっ? もう脱いでるの??」
「いつもそうしているだろう、何か問題があるのか?」
「いや、それは……ないけ、ど」
ムクっと起き上がった七瀬は背中に手を回したが、どう脱いだら良いか一瞬思案した。
ドレスを着用したのは今回が初めてだ。先程はスタッフに手伝ってもらいながらだった為、全く勝手がわからない。
『早く脱がないと、パニエに染みるし……ど、どうしたら良いんだろう』
髪型は毛先だけ軽くウェーブをかけ、ハーフアップにしたスタイルなので、こちらは複雑ではないから問題はない。考えないといけないのは、やはりドレスの事だ。
言葉を発さず、眉間に皺を寄せていると衣装を脱ぎ終わった義勇が「どうした」と彼女の左頬をそっと包む。
じっと見据える濃紺の双眸には情欲よりも、今は心配する気持ちが浮かんでいた。
「うん、実はね」
ドレスの脱ぎ方がわからない。
静かだが、はっきりと義勇に伝えると彼は無言になった後にゆっくりと七瀬の後ろに回り、ビスチェ部分のチャックを静かに下げる。
『あ……少し楽になった……』
きゅっと程よい力で体を締め付けていた生地が緩むと、ふうと短い息をついた七瀬である。
「引くぞ」
「うん、いいよ」
足元側に回った義勇は腰からドレスを自分の方へ、慎重にひいていく。レンタル品の為に破損しては大事だ。彼は七瀬の体から無事に生地の全部を引き抜くと、ドレスを先程まで座っていたソファーにそっとかけた。
「こうやって離れて見ても、やっぱり綺麗な色だよ』
「ああ、お前によく似合っていた」