恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「中世の人達は凄いね。この格好でダンスしてたんだもん。現代の社交ダンスの衣装は踊りやすそうだけど、ドレスで踊るのって思った以上に骨が折れるよ」
「そうだな」
カップを両手で持ちながら、ズズッと紅茶を飲む七瀬はチラッと下に視線をやると短いため息をついた。
ふわっとスカートの裾が広がっているのはプリンセスラインのドレスだ。
「華やかな社交会だけど、見ただけじゃわからない事もきっとあるんだよね…。私は現代に生きてて、庶民で良かったよ」
「……そうか」
ふっと笑みをこぼす義勇はカップをソファーの前のローテーブルに置くと、恋人の腰をそっと抱き寄せた。
「どうしたの?」
「いや、何となくこうしたくなっただけだ」
「ふふ、じゃあ私も」
カップをそっとテーブルに置いて、義勇の腰に両手を回す七瀬は口角を上げながら目を閉じた。
「義勇さんは中世に生まれていたら、きっと寡黙な王子様だよね」
「……否定は出来ない」
「でしょう? そこがミステリアスに周囲には映って…モテモテになると思う。話すと口下手だけど、癒されるしね」
「お前、それはどう言う意味だ?」
褒められたのか、やや落とされたのか。義勇は恋人が発する言葉の真意がよく掴めない。
「見た目も素敵だけど、中身はもっと素敵だって事だよ。義勇さんはちょっと言葉足らずで不器用だけど行動できちんと表してくれるし」
『言葉足らずで不器用……やはり恋人にもそう思われているのか』
「あれ、義勇さんどうしたの?」
七瀬の腰に回っている彼の右手から、やや力が抜けた。それを疑問に思った彼女は顔を上に向けるのだが…。