恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「七瀬は……いや、やはりいい」
「えっ、何それ? 言いかけてやめるの、めっちゃ気になるー」
「言って」「言わない」の押し問答を数回繰り返した末、折れた義勇がぼそっと呟いた。
「ダンスは好きだけど、社交ダンスは経験ないよ。この衣装で踊ったら雰囲気出るもんね。じゃあさ二人で動画観て見よう見まねでやってみようよ」
「そうだな」
ベッドから立ち上がり、テーブルに置いていたスマホを持ち、再度義勇の隣に座り直す七瀬は「社交ダンス 初心者」と検索をかけ、目当ての動画を探していく。
「ブルースとジルバって言うのが基本みたいだね。スタンダードな方はブルースって事だから、こっちをちょっと見てみよっか」
「承知した」
ブルースとジルバはどちらもあまり社交ダンス界では踊られなくなってしまった種目だ。
しかし、この二つは、初心者が社交ダンスを学ぶにあたって大事な事項を覚えるのにとても良い種目と言われているらしい。
「姿勢、手の組み方、それから足を出す位置がとにかく大事かあ……これ、呼吸で使う足捌きと共通していそうだね」
「ダンスのステップも、足捌きもどちらも動かす場所は足だからな。それは一理ありそうだ」
二人はじっと十五分間、社交ダンスの動画を見続けた。
それからおもむろに立ち上がると ——
「まずはホールドを張るんだったな」
「うん、そうそう」
互いに向き合い、基本のキとも言うべき姿勢をした後は位置関係を調節する。
「ちょうどあそこに姿見があるから、移動しようか」
「動画はもう少し互いのバランスが良かったような……」
「うーん、何でもそうだけど最初は難しいね」
このホールドだけでも数十分、二人は悪戦苦闘した。動きがわからなくなれば、動画で動きを確認する。その反復を繰り返していくと……。
「義勇さん、最初の頃より手の組み方とか動画に近づいた気がする。次はゆっくりステップをやってみよう」