恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「義勇さんの目の色に近いなあって思ったから、この色にしたんだよ」
「そ、そうか……」
「? 何か顔赤くない?」
「気のせいだろう、この服のフリルが首に当たって落ち着かないんだ」
……かなり苦しい言い訳である。
七瀬の指摘通り、照れから来る顔の赤みだ。右手で風を送ってその熱を下げようと試みる義勇を見ながら、七瀬は一人ふふっと笑みを浮かべた。
★
「写真撮影楽しかったよ。素敵な中庭で一人ずつでも撮れたし、二人一緒にも撮れたし……。スマホのアルバムにも義勇さんとの仮装写真が増えたし、私凄く満足!」
三十分間の写真撮影が終わり、二人はゲストルームへと戻って来た。尚、着替えはこれからである。
「義勇さんはどうだった? 撮影中も私だけテンション高かったし、やっぱりつまらなかったかな……」
「いや、つまらなかったのではなくてだな」
「え……じゃあどうしたの?」
ベッドに腰掛けている七瀬の右隣に、ゆっくりと座った義勇。彼は恋人の唇に静かに口付けを一つ落とすと、ドレス姿の七瀬を優しく抱き寄せた。
ドキドキと高鳴る鼓動が二人を包む中、言葉を発するのは義勇だ。
「お前の…この姿がよく似合っていて……」
「うん……それから?」
隠れていない彼女の背中を大きな手のひらで、そっと撫でた彼はトン……と自分の額を七瀬の額に当てる。
額同士が密着すると、互いの息づかいがすぐそこで感じられた。
「言葉がいつも以上に出なかった」
「そう、なんだ……」
二人の間に少しの沈黙が訪れるが、その空気を変えたのは七瀬だ。
「私もね……義勇さんが凄くカッコよくて、恥ずかしさをごまかしたかったからいつも以上にはしゃいじゃったよ」
「そうか……お前がそう言ってくれるなら、恥ずかしかったが着た甲斐があった」