恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「義勇さん、こっちのドレスとこっちのドレスだったらどっちが好き?」
「………」
七瀬が義勇に見せているのはAライン、それからプリンセスラインと言われているデザインだ。
Aラインはアルファベットの大文字の「A」のような形をした衣服の事だ。ワンピースやスカートにあるデザインで、上部が小さく、すそに向かって広がったシルエットのことをいう。
対してプリンセスラインはウエストで切り替えがあり、そこからスカートが大きく膨らんだデザインの物。
「プリンセスラインって言うぐらいだから、姫気分を味わえるのはやっぱりこっちかな?」
ふんわりとした大きなスカート部分に触れながら、口元に笑みを浮かべている七瀬だ。
「すまない、問われても俺にはよくわからないんだが……華やかなのはお前が触れているデザインかもしれない。ドレスが光っているしな」
「光るって……あ、ラメの事ね」
ドレス全体にラメが入っていて、スカートが揺れるたびにキラキラ光りそうだ。
「じゃあ、私これにする! 義勇さんはどうしようか?」
近くにいたスタッフに「これにします」と伝えた七瀬は、義勇の腕にスッと自分の腕を絡ませた。
「……どうした」
「ん? こうしたらなんとなく雰囲気出るかなあって」
「ふふ、お二人は仲がよろしいんですね。何よりです」
「ごめん、義勇さん。嫌だよね……」
声をかけられ、パッと絡ませていた腕を離す七瀬に余計な事を言ったと申し訳なさそうに謝るスタッフ。
「いや…」
“問題ない” この言葉は口から出なかったが、義勇は七瀬の手に己の手を絡めて恋人繋ぎをした。
「次は義勇さんだね。どんな服が良いかなあ」
笑顔で横にいる恋人に問いかける七瀬は、とても嬉しそうな様子だ。