恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第61章 注意せよ、その風に 〜He is gale〜 / 🍃
「え、いや。あの師範…大丈夫、で」
「平気だったら、今ごろ呑気なツラでメシ食ってるだろうがァ」
「ひっ……」
ギロリと睨まれた七瀬は、ビクッと体と心を震わせる。
“早くしろォ”と催促するように凝視された彼女は、観念して体を向けるとゆっくりと目の前の背中に寄りかかった。
「よし、行くぞォ」
『わあ、視点が高い……!』
七瀬の膝裏に両腕を回し、スクッと立ち上がった実弥は、ゆっくりと歩みを進めて行く。
再び浅草の街並みを二人で通り抜けるが、先程とは見える景色が全く違い、七瀬は新鮮な気持ちを味わう。
「あっ……さっきの怖いお兄さんだ。また会っちゃった」
「本当だー……でも隣にいた女の子をおぶってる姿はなかなかカッコよくない?」
再び二人の耳に先程すれ違った女子達のヒソヒソ声が届いた。
しかし今回は様子が違い、彼女達の声色に恐怖と言った感情はあまり乗っていない。
代わりに実弥に対する興味がありありと見て取れる様子である。
『な、何か恥ずかしいな……』
顔の中央に熱が集中していく七瀬に対し、実弥は特に変わった様子は見られない。よくある事なのだろうか。
そのままの状態で二人は帰宅した。
★
「風柱様、沢渡さん。お帰りなさいませ。如何でしたか……と! おや、これはまたどうして沢渡さんがそんな状態になっているのでしょう」
門扉に近づく主の足音を聞きつけ、玄関で待っていた長友は目の前の光景にしばし唖然としつつも安心していた。
「今、帰ったぞォ。長友、お前の予想は大外れだったぜ」
「さようでしたか。残念ですねぇ」
もちろん隠は残念とは微塵も思っていない。考えていた意図とは多少違ったが、己の予想通りに事態が動いた為だ。