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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第61章 注意せよ、その風に 〜He is gale〜 / 🍃



「そうかもなァ」

フッと笑顔になる実弥が、七瀬には等身大の二十一歳のように見えた。

入り口で券二枚を見せると店員がちぎった半券を実弥に渡す。自然な流れで七瀬に渡す彼は、普段あまり見る事がない穏やかな表情だ。


『師範、やっぱり良いなあ』

劇場に向かう後ろ姿を見た彼女は、改めてそんな事を思う。











「おい、沢渡大丈夫かァ」

「………うっ、はい。何とか……」

一時間後。
目的の活動写真の上映が終了し、二人は劇場の外へと出て来ていた。顔色が悪い七瀬を心配しつつも、やや呆れている実弥である。

「あんなん、作りもんだろうがァ。鬼殺の血は平気なのに活動写真の血はダメってのは……」

「鬼殺は任務って意識が常にあるし、気が昂っているので血の事まで構う余裕がないんです……!」


長友の見立ては外れた。
七瀬は流血の場面が多かった作品を観て、気分が悪くなったのだ。

鬼殺や鍛錬の様子を目にした事がある風柱は理解が出来ぬ —— そんな様子で顔中いっぱいに疑問符を浮かべている。

通行する人々の往来の邪魔にならないよう、建物の影に立っている実弥はどうしたもんかと、頭をかきながら首を傾げた。


「おィ、立てるかァ」

「……すみません、ちょっと……難しいです」


めまいと若干の吐き気を催している七瀬は、額を右手で押さえながらゆっくりと呼吸をしている。


『ここでいつまでもこうしてるわけにいかねェ…しょうがねェな』


「帰るぞォ。そんなんじゃメシも食えねェだろ」

「えっ……?」


七瀬が左に顔を向けると、そこには実弥がしゃがんで背中を見せていた。おぶって自宅に帰ろうとするつもりらしい。




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