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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第61章 注意せよ、その風に 〜He is gale〜 / 🍃



『何だァ? 沢渡と話してんのは…長友か?』

二人が話している時間よりほんの二、三分前の事。玄関扉の外まで聞こえる声を捕らえた実弥が、療養中で不在の隠の存在を認識した。


『おや、風柱様がお戻りですね』


長友は耳で実弥の気配を感じ取り、七瀬との会話をごく自然な流れでやんわりと中断して玄関に向かう。

この隠は元・隊士であり、雷の呼吸の使用者だった。肩の怪我により第一線は退いたが、雷の呼吸を使う者に共通している聴覚の良さはまだまだ健在と言うわけである。


「お帰りなさいませ、風柱様! 先程帰宅しまして、継子の沢渡さんと少し話しておりました。休暇を頂き、本当にありがとうございます……」

ガラ、と玄関を開けた先には正座をして実弥を出迎える長友の姿があった。頭巾の間から見える目元はにっこりと穏やかな笑みを宿している。


「足はもう平気かァ? つっても、お前がいなくても何とか回ったぜ。沢渡も意外と出来る事が多いしなァ」

「隠としては少し寂しい返答ですが、それは何より! 所で風柱様……」

「あァ? どしたァ?」


脱刀した実弥から日輪刀を受け取った長友はコソコソと秘密話を打ち明けるような近い距離まで、近づくと ———


「いえ、沢渡さんがかわいらしい方で良かったなあと。人柄も特に問題なさそうですしねえ」

「お、おう。まあ悪くはねェよなあ。けど頓知(とんち)が好きな風変わりなやつだぜ? お前に少し似てるかもなァ」


「ええ、ご本人からお聞きしました。風柱様の事もよくご理解しているようで、そこも良かったなあと」


隠は頭巾の下でにんまりと笑みを浮かべた。善逸ほどではないが、長友も人の感情の喜怒哀楽と言った部分を読み取る事が多少出来る。

七瀬の話を出した途端、実弥の鼓動から恋慕の情がほんのりとだが、認識出来た為だ。




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