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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第61章 注意せよ、その風に 〜He is gale〜 / 🍃



『甘露寺も伊黒も純情って言葉が、しっくり来るよなァ』


蛇柱の睨みを何でもない事のようにかわせるのは、そうはいない。
実弥は小芭内と蜜璃。
二人の関係性に好感を抱いていた。尚、これは彼だけではなく、柱の共通認識と言える。

ただし霞柱は他人にあまり興味を示さない為、無一郎はあてはまらない話かもしれない。


『沢渡、今日もサボらずやったなァ』


実弥はズズっと緑茶を啜りながら、継子との稽古を思い出していた。頓知(とんち)を提案してからと言うもの、七瀬の脱走がなくなっている。


『型を磨けっつった事も律儀に受け止めて、精度が上がってたし…』


『師範! もう一度! お願いします……!』


今朝も昨日もおとといも、稽古終了を告げても粘る姿勢を見せた七瀬の真剣な表情が風柱の脳内に思い浮かんでいた。


「どうした、不死川。嬉しそうだな?」

「あァッ?? そんな顔してねェよ……」


再びじぃっと小芭内の双眸が実弥の双眸をとらえると、風柱はふいっと顔をそらす。


『嬉しそうだとォ?? 俺がかァ……? このおはぎが美味いからだろ…』

バカバカしい。
盆の上の小皿にのっている好物の甘味を、実弥はパクリと大きめに口を開け食していく。

あずきの甘さが口内を心地よく満たす。すると口元に笑みが静かに浮かんだ。


『ほら、見ろ。やっぱりおはぎがうめェからじゃねェか…これ、あいつと食いてェなあ』

……!!
実弥はおはぎをゴクンと飲み込んだ。胸の鼓動がゆるやかではあるが、とくんとくんと上昇した。


『沢渡がやたら美味そうに食うからだろォ。気のせいだ』


風柱・不死川実弥。
この瞬間、恋慕に繋がるそよ風が彼の心でそっと吹いた。

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