恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第61章 注意せよ、その風に 〜He is gale〜 / 🍃
『俺、ぜってー許さねえ…だから優しいなんて幻だな。女の子にしか見えない魔術みたいなもんだわ。柱だからなんだよ。背もちょっと高いからって……』
善逸は自分の中で実弥をそう位置付けた。
我妻善逸。彼は非常に思い込みが激しく、妬みやすい性分でもある。
今の今までいた食事処にチラッと視線をやり、首を再び傾げた後は先を歩いている七瀬の姿を小走りで追いかけた。
「七瀬ちゃん!! 鰻ご馳走さまー! スッゲー美味かったよ〜」
★
「ほう、良かったな」
「あァ。やっぱお前の言う事は的確だァ、伊黒」
七瀬が善逸と鰻を食べていた頃、実弥は蛇柱邸を訪問していた。悪鬼は今回も無事に殲滅出来た。
自宅に帰る途中で、小芭内宅の近くを通ったので報告がてら訪問したのだ。
柱は多忙だが、朝であれば自宅にいる可能性が幾分高い。
長期任務や遠方任務はこれにあてはまらないが、鬼の討伐は翌朝までかかる事もある。
よって午前中は睡眠を取る事も含め、在宅している場合が多いのだ。
「しかし、頓知(とんち)か。若い女にしては珍しい嗜好だな。無論悪い意味ではないが」
「あァ、俺も初めて知った時は笑ったかんなァ。だが実際やってみると意外と面白かったぜ。甘露寺とやるのも良いんじゃないかァ?」
「なっ、 何を言うのだ! 貴様は!」
風柱は蛇柱邸の縁側に隣り合って座り、友人と会話をしていた。
小芭内は顔を仄かに染め、首にまいた蛇の鏑丸がシュルルと一周まわる。
「あいつは”お前とやる事は何でも楽しいし、好き” なんだろォ?」
「不死川……それ以上は控えろ。二度と口がきけんようにするぞ」
左右色が違う双眸が、風柱を睨みつけた。