恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第17章 令和になってもやっぱり寡黙 / 🌊
グワァ……と再度、元下弦の鬼は立ち上がる。
え…頸がまた繋がってる??
善逸の霹靂一閃でも倒せないなんて……どうしたらいいの??
鬼の縦に瞳孔が割れた血のような目が私をはっきり捉えた。
呼吸を整える。
「全集中 — 水の呼吸!」
右腕の止血は出来たけど、いつもより力が出にくい…でもやらなきゃ……
「玖ノ型 水流………」
くっ………右腕が上手く振るえない……
「水の呼吸 拾壱ノ型 ———」
私の後ろから青いジャージ姿が飛び出して来る。
「——凪 」
ポトン、と水滴が1つ彼の足元に落ちると、そこから波紋が広がっていく。やがてピシ.....とその波紋は止まる。
鬼が義勇さんの間合いに入ると、一瞬で頭と胴体がスパッと斬れた。シュウウウ………と今度こそ鬼が灰になって消えていく。
凪を放った人物は、血飛沫がついた日輪刀を一振りして納刀すると私を見て「七瀬」と名前を呼んでくれた。
「義勇さん………!」
ギュッ…と彼を抱きしめる。
「すまない、大分待たせてしまった」
「大丈夫です......」
義勇さんは私を一旦体から離すと、ジャージに入れていたタオルハンカチを私の右腕にまいてくれた。
「我妻も栗花落も無事だな。間に合って良かった」
「冨岡先生、記憶戻られたんですね…」
「フガ…禰󠄀豆子ちゃあん…今度さあ…」
カナヲが嬉しそうにしている中、善逸はまた地面に横たわって寝ていた。ありがとう、と彼の背中をぽんぽんと優しくたたく。
この日の鬼討伐は記憶を取り戻した義勇さんの”凪”によって、終わりを告げた。