恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
それから一週間が経って、今日は八月八日。僕の誕生日がやって来た。
「無一郎は ”無理を無理” と感じずに動く子だよね。ほんの一瞬でもいいから、自分の事を大事にして」
昨日お館様から届いた文にはそう書いてあった。
「無一郎! オ誕生日、オメデトウ!! 」
「……銀子、何でそんなに嬉しそうなの」
早朝五時半。
朝稽古の準備をしていると、僕の鎹鴉がバササと羽を羽ばたかせて肩にスッと降りて来た。
「当タリ前ジャナイ! 主ノ生マレタ記念スベキ日ナノヨー! 嬉シイニ決マッテイルワ」
そんなもの?
たかだか歳を一つ重ねただけじゃない。よくわかんないなあ。
鴉の機嫌が普段の倍良い様子を首を傾げながら見ていると、後ろから「おはよう」と声がかけられた。
「無一郎くん、お誕生日おめでとう。一番に伝えたかったんだけど、銀子ちゃんに先越されちゃった」
「ありがとう」
「気ニ入ラナーイ! ドウシテ七瀬ハ、無一郎カラオ礼ヲ言ワレルワケ??」
「あっ、ちょっと髪引っ張るのやめて〜!! 」
まただ。
七瀬も僕におめでとうって声をかけてくれる瞬間、凄く嬉しそうな顔をしていた。
誕生日には何か特別な力でも働くの??
★
「へえ、洋食?……初めて食べるかも」
僕は昼食の為、居間にやって来た。自分の目の前の座卓にそれぞれ並べられているのは、つい先日七瀬が銀座で食べて来たと言う卵料理だ。
楕円形の形をしたそれは、ふわふわとした卵生地で包まれている。
中には一体何が入っているのだろう。
それからもう一つ同じような卵料理が座卓の中央にドンと置かれていて、こっちは丸い形だ。
何か満月みたい。でも凄く食欲を刺激されるなあ。