恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
ガラガラ —— ピシャン。
「私達、そんなに仲良く見えるのかな? 普通じゃない?」
「さあね。本田さんがそう言うんだったらそうなんじゃないの」
やや強引に押し出されるようにして、僕と七瀬は彼女に背中を押されて玄関の外に出た。
「本田さん、私達とごはん食べるようになってから良い意味で遠慮がなくなったよね」
「そう? 僕はよくわかんないけど」
基本的に他人の事はあまり気にならないし、正直言うとどうでも良い。でも七瀬の事は凄く気になる。
君が何を言うのか。君が誰と話しているのか。
……君が何を考えているのか。
主にこの三つは、彼女と恋仲になって以降気にかかるようになった。
「無一郎くんは、夏って……」
「嫌い」
僕がこう返答すると、あからさまに肩を落としてがっくりする七瀬だ。
「聞いて良いかな。どうして嫌いなの?」
「暑いから。汗もかきやすくなるし」
「そっかあ」
肩は落としたけど、物の数秒で気持ちを切り替え、質問を再度してくる彼女。
夏が嫌いな理由はさっきも言った通り、あと一つある。
「僕が夏嫌いだと、君に何か不都合があるの?」
「ううん、そんな事はないんだけどね」
何だろう。七瀬の不都合になる事って……少しだけ逡巡してみるけど、何も思い浮かばなかった。
「ねえ、ちょっとこっち向いて」
「え、うん。なあに……」
僕は彼女にスッと近づき、触れるだけの口付けをしてみた。
ちう……と音を少し響かせて七瀬から唇を離すと、動きが止まったように顔も固まってしまった。
「不都合、あるんでしょ。言いたい事あるならはっきり言って」
そうしてくれたら、僕も君に夏が嫌いな理由を伝えるからさ。